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1日1回、見られるだけで幸せ、みたいな。
違います。ス●ーカーじゃないですって!(笑)
人ごみの中で、帝人はぽつんとそこに立っていた。
ここであの人を見つけるのがほぼ日課になっていた。特に声を掛けるでもない、ただ遠くからその姿を見られる。それだけで嬉しかった。
「はぁ、寒い……今日はいないのかなぁ」
凍りつきそうな手に息を吹きかけて束の間の暖を取ると、ポンと後ろから頭に手を置かれた。いきなりそんなことをしてくるような知り合いが咄嗟に思いつかずちょっと呆気に取られると頭の上から声が聞こえてくる。
「……こんな寒い日に何してんだよ」
「!」
振り返るといつものバーテン服にマフラーという寒そうに見える格好で静雄が立っているではないか。
帝人は驚きのあまり言葉が上手く口から出てこないで、ただ慌てふためく。
「あぁっ、あのそのあの」
「ったく、風邪引くぞ。ほら」
そう言って静雄が帝人に差し出したのは小さな缶一本。
帝人が首を傾げてそれを見ると、さらにずいっと前に出されたので礼を言って受け取った。それは暖かく、 冷え切った帝人の指先からじんわりと熱を伝え、思わず柔らかく微笑んでいた。
「……あったかい」
「こんなに冷え切ってんだ、当たり前だろ」
静雄が缶を握る帝人の手を上から包み込めば、手の甲からは静雄の温もりが伝わってくる。それと同時に帝人の顔も、真っ赤に染まる。
それを見た静雄もまた釣られて思わず照れると、ぱっとその手を離してすぐに帝人に背を向けた。
「あー…まぁなんだ。友達待ってるのはいいけど、もっとあったかいとこで待ち合わせしろよ? じゃあ」
「あ、え、っと」
俯き気味に顔を少しだけ帝人の方に向けて話を終わらせると、静雄はひらりと手を振ってそのまま歩いていってしまう。
帝人はその背を見送りながら、ぼそりと呟いた。
「違うよ。僕が待ってたのは……」
あなたです。
言えるはずのないその言葉を飲み込むと、帝人は手の中の缶を握り締めた。
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