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静帝(彼は意外な人?)


意外な行動を取る人だといい。
このもん的に静帝は、自覚ある積極派(帝人)と自覚ない積極派(静雄)だろうと思ってるようです。








 帝人が最近慣れたもの。
 池袋の喧騒と人の多さ、都市伝説といわれていた首なしライダーの存在、そして、殺意を感じざるを得ないある二人の追いかけっこ。特に最後の二つは非日常過ぎたのに、今では自分の中の日常と化している。
 今日もまた、そんな光景が見られる日常が始まりを告げたはずだった。

「あれ?」

 朝もまだ早い時間で、来良学園に向かう生徒は殆どいない時間帯。たまたま朝から回り道を考えついた帝人が公園を遠目に見たときだった。
 黒い足の膝部分が公園内にあるベンチの背凭れの部分から覗いていた。きっと普段なら気が付かないか、気付いても通り過ぎるだろう。しかし今日は目に付いてしまった。
 帝人は恐怖心もなく、吸い込まれるように公園内へと足を踏み入れる。
 木々に当たる朝日は緑にいっそうの輝きを与えているが、そんな木漏れ日に照らされていながらも、ベンチの人物は微動だにしない。帝人は背凭れ側からそっと覗き込むと、見えた顔に心臓が跳ねた。

──静雄さん!?

 眩しいのか、腕を目元に乗せて日除け代わりにしている。サングラスは掛けっぱなしだが胸元は規則正しく上下を繰り返し、透けて光る金髪は時折風に揺られているが、その程度で起きる気配もない。
 あまりにも珍しい光景に帝人の視線が固まった。

──でも、なんでこんな早く?

 考えても帝人に解かるわけがないけど、考えずにいられなかった。解かったことは、この人物は間違いなく平和島静雄である、という事実だけだった。
 帝人は眠っている静雄を起こさないようにと気を使いながら反対側に回り込み、もう一度その人を確認するが全く起きる気配もなさそうで、ホッと胸を撫で下ろした。肩から斜めに掛けられているカバンのベルトを両手で握ると、帝人はそのままじっと静雄を見つめるが気持ち良さそうにすやすやと眠っているだけ。
 暫く帝人は見守るように静雄を見ていたが、ベンチの傍で何かを見下ろす高校生、と言うのは不思議な光景だったのだろう。ふと視線を上げると公園の外を歩いていた人が何やら自分の方を見ていたので、思わず視線を逸らした。

──何やってんだ、僕。

 帝人は一旦、ベンチから離れるようにして歩き出す。ほんの数歩だけ離れると、そっと先程の視線の先に振り返ってみた。だがもうそこに人の姿はなく、帝人は溜息を吐き出すと、踵を返して再び静雄の傍に歩み寄ると、少しだけ静雄が動いたような気がして思わず自分の口元を押さえ、その場に立ち尽くした。
 しかし、それも気のせいだったようで静雄は変わらず気持ち良さそうに寝入っている。
 そこから更に数歩だけ、帝人は静雄に近付くと今度はその場にしゃがみこんだ。
 自分が手を伸ばしたら届きそうな位置。顎を両の手で支えて、その光景を見入っていると時間が緩やかに流れていく。喧騒とはまるで無縁、昼間や夕方見るのとは違う姿。それは帝人にとっても貴重すぎる時間で、ただ見ているだけで幸せだった。
 だが、その時間は突然終わりを告げた。

「……ん、」

 小さく寝苦しそうな声を上げると、静雄はギリギリのサイズで収まっているベンチの上で寝返りを打ったのだ。
 今まで日除けにしていた手でサングラスを外し、もう片方の腕で器用に身体を横に向けると難しそうに眉を寄せ、サングラスを持つ手を帝人の方向へと伸ばした。

「っ、わぁ!」

 帝人の声が思わず上がるのと同時にバランスを崩してその場に尻餅をついてしまう。その声に反応し、静雄はゆっくりと瞼を押し上げた。
 まだ寝ぼけた静雄の視界に映ったのは、制服の少年が尻餅をついて座り込んでしまっている姿。しかしそれが誰かを認識すると同時に、静雄はベンチから飛び起きて少年を呼んだ。

「おいっ、大丈夫か!?」
「は……い、大丈夫です。それよりも……起こしちゃってごめんなさい」
「いいんだ。気にすんな。あー…うん」

 失敗した、という言葉を飲み込んだ静雄はくしゃりと前髪を掴むとそのままガシガシと頭を掻きながら立ち上がり、帝人へと手を差し伸べた。
 帝人は礼を言いながら、その手を掴んで立ち上がるとズボンの砂を叩き落としながら静雄を見上げ、静雄もまた胸ポケットへサングラスを納めると帝人に視線を渡す。
 その時、二人の視線がぶつかり思わずどちらともなく視線をずらしてしまっていた。

「あー…」

 どこか伐悪げに静雄が声を上げると、帝人は下を向いたままでいる。
 静雄はとりあえず帝人に背を向けると、先程まで横になっていたベンチに腰掛け、そして膝に腕を置き手を組むと下を向いて大きく溜息を吐き出して、小さな声で「よしっ」と気合を入れた。

「えー…っと、これから学校か?」

 姿勢を変えずに顔を上げると、下を向いたままの帝人が小さく身体を揺らす。しかし帝人は静雄に目線を合わせると、こくり、と首を縦に動かしたことで、静雄は少しだけ安堵した。
 すると今度は、帝人が静雄に質問をしてきた。

「静雄さんは…どうしたんですか? こんな朝早くに、こんな所で」
「……あーまぁ、ちょっと……な」
「ごめんなさい」

 答え辛そうな言い方に帝人は即座に謝罪をすると、静雄はしまった、という表情をしてしまって、すぐさま下を向くと首を振り、否定した。

「いや、違う。そうじゃないんだ」
「?」

 帝人は首を傾げたが、何かに気が付いたようにカバンを開けて中から携帯を取り出すと、ボタンを押して静雄を真っ直ぐ見た。

「あ、じゃあ僕行かなくちゃ…」
「あぁ…気を付けてな」
「はい、行ってきます」

 帝人は笑顔で静雄に挨拶すると、深く一礼して走って行ってしまった。
 静雄はその姿を見送り、彼の姿が見えなくなると今度は身体を背凭れに預けて盛大に大きな溜息を吐いて空を仰いだ。

「……言えるかよ。朝のお前を見てみたくなって、なんて……」
 
 そう独りごちると、胸ポケットから煙草を取り出そうとしたがポケットに手を入れた所で止めて、立ち上がる。そして大きく背を伸ばすとサングラスを掛けて、帝人が走り去った方向とは逆から公園を後にした。

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