ツイッター診断メーカー『RTされたらCPかくったー 』(http://shindanmaker.com/142202)をやってみたところ、鍵付でRTできないからとリプライ飛ばして頂いたのでやってみた。
なお、好きカプ指定が「帝人受けでオススメを」といわれたので、静帝を書いたよ。
なんとなく私の中で通常運行の静帝でしたが、腕が落ちた感は否定しない。
あの子達はこう、もだもだしながら進んで欲しいです。
東京・池袋。
行き交う人の多いこの街で、少年は今日も非日常を心で求めながら、それに気付かず日常を暮らしている。
少年の名は、竜ヶ峰帝人。
池袋駅から程近い、来良学園に通う高校生である。
帝人は帰り道に、いつも人込みの中で必ず見つけ出し、目で追ってしまう人物がいる。
彼の名は、平和島静雄。
この街で彼のことを知らぬ者はほぼ皆無、といってもいいだろうくらい彼は有名人だ。
人込みにいても頭一つ抜きん出た身長。金に染められた髪にサングラス、そしてバーテン姿はトレードマーク。
彼を知る人は見かければ、皆すぐに道を開けるほどの『喧嘩人形』として恐れられている。
帝人はそんな彼に恋をしていたが、本人はきっと気が付いていない。
ただ彼の姿を目にする、そんな日常、そう割り切っているからである。
そして今日もまた彼の姿を探そうと、斜めに掛けたカバンのベルト部分を両手でぎゅっと掴んで一人意気込んだ。
「よしっ」
目の前には同じような年頃の集団やスーツのサラリーマン、客引きなど色々な人が歩行者天国になっている通りを埋めている。
帝人はその中から彼を探そうと、目線を少しだけ遠くにやろうとした時だった。
ドン、という背中への衝撃はあまりに突然で、帝人はそのまま前のめりに身体のバランスを崩した。
「……っ、わ」
小さく声を上げると同時に、視界は人々の足元に近づく。
普段であればその視界は間違いなくその足元が少し離れて見える状況、のはずだった。
しかし今日は違う、がくっと身体にもう一度衝撃があったかと思えば、そのまま腕を引かれた。
「……っぶねーなぁ。おい、大丈夫か?」
「あ、はい。大丈……っ!」
聞こえてきた声だけでは判別がつかなかった。
腕を掴まれたままで体勢を立て直して顔を上げた瞬間に、帝人は思わず目を瞠り息を飲んでしまった。
何故ならそこにいたのが、平和島静雄、その人だったからである。
静雄は腕を掴んだまま、人混みに消えゆく帝人にぶつかっていった人物を目で追いながら話す。
「ったくあぶねぇな。ちゃんと周りを注意しろって。なぁ?」
「え、あ、はぁ……」
いきなり話しかけられた事で煮え切らない返事の帝人に、静雄は一瞬だけ呆れたような視線を投げたが、すぐに視線を外してサングラスを指で押し上げた。
「まぁ怪我無くて良かったな。じゃあ」
掴んでいた腕を離すと、ベストの胸ポケットにあるケースを取り出すや、それをぐしゃりと握り潰して舌打ちをした。
「なんだ、もうねぇのか」
独り言のように言って、静雄はその場から一歩足を踏み出そうとすると、ふと自分の腕が引かれたような気がして足を止める。
そして、そのまま振り返ると、今そこで助けた少年が自分のシャツの袖を引っ張っていた。
「……ん?」
「あ……」
それに驚いたのは他でもない帝人本人。
だが、今の状況はどう見ても後には引けず、内心震え上がっていたが、瞳に恐怖の色は差し込んでいなかった。
ただ身長の差のおかげで、サングラスの奥にある静雄の瞳が覗き見える。
それを見た帝人はそのまま言葉を紡いだ。
「あの……ありがとうございます」
「ん? あぁ、いいよ怪我はなかったんだろ?」
ぶっきらぼうな言い方だが、静雄の声に帝人の心が躍る。
静雄の問いに答えるように首を縦に振ると、大きな手が自分の頭の上に乗せられたのを感じた。
「良かったじゃねぇか。じゃあ俺は行くぜ?」
「しっ、静雄さん!」
思わず名前を叫んでしまい自分自身にびっくりしてる帝人と、同じように驚いた顔をして帝人を見た静雄の視線がかち合う。
思わず視線を逸らしてしまった帝人だったが、静雄は首を傾げながら首元に手をやりながら聞いてくる。
「……もしかして会ったことあるか?」
「は、はい……」
この時、帝人は小さな嘘を吐いた。
しかし静雄は「そっか」と納得すると、帝人に向けて少しだけ困ったような笑顔を向けた。
「悪い。俺、人覚えるの苦手でよ」
「え、あ……いえ」
静雄の顔を見て、帝人の心がチクリと痛む。
そのまま俯くと帝人はカバンの中を探り静雄に自らの手を差し出した。
それを見た静雄は再び首を傾げたが、帝人は静雄の手首を掴むと、もう片方に握っている物を静雄を手の平に落とす。
バラバラと小さな包みが数個、それは個包装された飴だった。
「これは?」
「あ、の……タバコ……あんまり吸い過ぎると身体に良くないですから」
「そうだな、サンキュ」
静雄はそういって笑うと、一つを開けて口に放る。
そしてその甘さに少しだけ頬を緩ませると、もう一つ封を切った。
「おい」
「え?」
静雄の声に帝人が顔を上げると、静雄は今開けた飴を帝人の口に押し付ける。
それは不意で、帝人の唇には飴の固い感触のすぐ後に静雄の指が触れた。
「……っ!」
「あ、悪ぃ」
ぱっと指を離した静雄に思わず照れてしまった帝人が顔を逸らすが、すぐに口に広がった甘さに静雄を見る。
すると静雄は柔らかく笑い、もう一度帝人の頭を優しく撫でた。
「飴、サンキューな。じゃ」
そういって去っていく静雄の後ろ姿を帝人は頬を染めたまま見送り、その姿が人混みに紛れたと同時にその場にしゃがみ込むと、ぼそりと呟いた。
「静雄さんの匂い、した……」
それは帝人の心を締め付けるには十分だった。
一方、静雄は帝人から離れると自らの指を見た。
その先端に残るのは他でもない、他人の唇の感触。
静雄は帝人の唇の感触の残る指で自分の唇に触れてみる。
それは全く違う感触を知らしめるだけだった。
「なんでアイツ、あんなに柔らけぇんだよ……」
今しがた別れた、まだ幼さの残る少年を思い浮かべ、静雄は一人、盛大な溜息を吐くと空を見上げていた。
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