中古 リフォーム このもん 臨帝←正(俺は、取り戻せなかった) 忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

臨帝←正(俺は、取り戻せなかった)


臨帝(僕は、つかまった)の続き的な。
Σ(´∀`; もう一人参戦かよ!みたいなったw





 

 


 




まるで砂のように零れ落ちた日常。
意地悪く笑うあの人が、今でも俺を苦しめる。

『行くな』

 そんな簡単な言葉でさえ、俺は口にすることが出来なかったんだ。


* * *



一緒に帰ろうと思って帝人のクラスを訪れたが、今帰ったとクラスの女子に言われた。
いつものように、へらりと笑って礼を告げたが心は不安に曇った。
「どこ行ったんだよ、帝人」
まだこの辺りに土地勘のない彼がどこかに寄り道は考え難い。
正臣は昇降口で靴を変えるとすぐさま駅に向かって走った。
駅に向かったのは何となくではなく、確信。
握りしめた携帯の画面には、駅の人込みにいる帝人。
送信主はあの人だった。
「間に合ってくれ…!」
送られてきた画像の場所は学校からそう離れていない。
本気で走れば間に合う、そう思って。
駅近く、人込みの中で良く知っている後ろ姿を見つけた。
ボアフードの黒いコートのすぐ後ろは、自分と同じ色のブレザー。
「帝人っ!」
叫んだ声は、名前を呼んだ彼よりも先に、あの人に届いてしまった。
帝人よりも先、その人が身体ごとこちらに振り向く。
まるで自分の後ろに隠すように、彼の手を引くと口の端を上げた。
しっかりと正臣に合わせられた焦点に、正臣の眉が寄る、
「臨也さん…」
「どうしたんだい、紀田正臣君?……いや、『将軍』と言うべきかな?」
最後の一言は、喧騒にかき消されるくらいの小さな声。
でも口の動きで正臣には何を言ったかが判り、臨也を睨み付ける。
そんな視線も後ろから聞こえた声に和らいだ。
「正臣?」
ひょこり、と覗いたその顔に正臣の心が安堵する。
表情が声が、帝人の知る正臣に変化した。
「帝人ぉ、ここに居たのかー。探しちゃったよ、帰ろうぜ?」
そういって差し出す手に、帝人の表情が揺れる。
帝人の手は、すでに臨也の手の中。
臨也は肩越しに帝人を振り返ると、戸惑っている帝人に問い掛けた。
「あれ? 一緒に帰る約束なんかしてたの?」
握っている帝人の手をちらりと見てから、わざとらしい笑みで正臣に視線を移動する。
正臣は笑顔のまま、帝人の返事を待っていた。
しかし帝人の首は力なく横に振られ、臨也が正臣に冷めた笑みを浮かべた。
「……と、いうわけで。じゃあね」
そう言って踵を返すと、帝人の身体も反転する。
帝人は慌てて顔を正臣に向けると、声を張り上げた。
「ごめん! あとでメールするから!」
帝人に手を振ると二人の姿は人波に飲まれていった。
正臣の視界から消え、ゆっくりと上げていた手が落ちていく。

そして俯くと同時に、奥歯がギチリと軋んだ。

拍手

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © このもん : All rights reserved

「このもん」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]